【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー

嬉しそうに笑って、チビひなたは人の傷を抉る。
ありえない。そうか、やっぱりこの子の中で私と樹くんの結婚はありえないのか。

そりゃあそうだ。それは私がチビひなたのお母さんになる事。そんなの絶対に嫌だよね。

少しばかり仲良くなって、お揃いのお土産を貰ったって、私はこの子の大好きな両親には敵わない。家族としてなんて絶対に受け入れてくれない。


チビひなたの言葉に樹くんは口元を歪め苦笑いをして、そんな父の想いも知らずにチョコレートを口いっぱいに頬張り幸せそうな顔をする。

ゲームをめいっぱいして、お菓子も食べて、22時を回る頃チビひなたは眠そうに目を擦る。

まだ寝たくないと樹くんにすがりついたが、駄目だと言われてシュンとして私の手をぎゅっと握りしめる。 今日は一緒に寝たい、と甘えられてチビひなたと一緒に眠る事になってしまった。


私はこの子が好きだ。
樹くんの息子だからでなく、この子自体が好きだ。

柔らかくて良い匂いがして、誰が見ても守りたくなる小さな命。

どこまでも純粋な心を持っていて、大人のズルさも知らない。 こんなに愛しい存在は、この世にあるのだろうか。

ゆっくりと頭を撫でながら満足そうに眼を瞑るチビひなたの顔ばかり見ていた。

「旅行楽しくて良かったね。私にお土産までありがとうね」

「デカひなたとお父さんも居たらもっと楽しかっただろうけどなぁー」

嬉しい言葉のはずなのに、胸が締め付けられるのは何故?

< 183 / 251 >

この作品をシェア

pagetop