【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
「僕が大きくなったら連れて行ってやるよ」
たまに大人びた事をいう生意気な子供で、でもそこに隠された純粋さはいつだって胸を締め付ける。
「本当~?」
「僕が働いたお金で連れて行ってやる」
「嬉しい!チビひなたは将来は社長さんだもんね。」
「僕、社長にはならない」
「え、そうなの?お父さんもおじいちゃんも社長なのに?」
「デカひなたって本当に馬鹿だなー。おじいちゃんも社長だけど、お父さんはおじいちゃんの会社じゃなくって自分の会社の社長じゃん。
僕にも自分の夢があるから社長にはなれないんだ」
「へぇ~…あんたの夢って何よ?」
「…お医者さん。」
うとうとして、いつの間にか眠ってしまった。樹くんとお揃いの長い睫毛。
顔はそっくり。けれどチビひなたの方がほんのり優しい顔をしている。
当たり前か。 樹くんだけの子供じゃない。この子の半分は、向日葵さん。
この子を形作る物の全てに二人の血が流れている。
子供の素直さは時に残酷だ。 将来の夢はお医者さん。 それは大好きなお母さんの影。
この世界で、チビひなたのお母さんは向日葵さんだけ。 私はこの子を傷つけるだけの存在かもしれない。