今日から不良王子と同居します。
玲生くんには気をつけなきゃいけないぞってこと。


あいつを早く大河内家から追い出さないと大変なことになるってこととか。


そんな風な内容のことばかり。


厳しい口調で玲生くんを非難する直政くん。


だけど、その言葉はなぜか私の中をむなしく素通りしていくだけ。


だって、他のことで頭がいっぱいで。


心ここにあらずの人形みたいにただうんうんって相槌を打っていた。


そんな私にしびれをきらした直政くんはたまりかねたように私の手を強く握ってきた。


幼なじみといえど年頃になってからは手を繋ぐことなんてあまりなかったのに。
今日はこれで2回目だ。


「音葉、あいつのことばかり考えるのはもうやめろよ」


「えっ」

彼の明らかに不機嫌そうなその強い口調にようやく気がついて、ハッと我に返る。


「こっちを見ろって」


彼にしては珍しく冷静さを失っている。


「私、別に玲生くんのことなんて考えてないよ」

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