今日から不良王子と同居します。
「音葉、直政」


慌てたように走ってきた彼女はなんだか真剣な様子。


「音葉もう熱の方は大丈夫?」


「うん全然平気、あのね直政くんが午後からどこかへ行こうって誘ってくれて」


「私も行く、行きたい」


すかさずそう言ってきた明日香ちゃんは、だけど顔がこわばっている。


「ねえ、いいでしょ?直政」


「……明日香」


すると彼はなにも答えずに表情を曇らせる。


「直政くん、おねがい。明日香ちゃんも一緒に」


私からも彼にお願いすると、すぐにまたニコッと笑ってくれた。


「……ああ、音葉がそう言うんなら別に構わないよ」


「よかった」


「だけど、明日香。なにがあっても余計なことは言わないでくれよな」


「うんわかった」


なぜだか明日香ちゃんには険しい表情で言う直政くん。


どうしたんだろ、明日香ちゃんに対してはきつい言い方。


もしかしたら、直政くんは私とふたりきりで行きたかったのかな。

< 317 / 373 >

この作品をシェア

pagetop