シークレットガール
「第6章」
あれから一週間が経った。あの日 -星野くんに私の「検証」を見られた日-から私は星野くんと一緒に行なっている。まあ、一人から二人になって楽になったことはある。
だから悪くはないんじゃないかと思えてきた。まあ、少しは信用できるようになれたかもしれない。
授業はやっぱり退屈だ。もっと強烈な刺激がほしい。今はそんなことばかりを考えている。
一人、ゆっくり立ち尽くして見上げる空。空は晴れていて雲は流れる。まだ悲しみを知らないようだ。
私はよく知っている。思い出したくもないほどに悲しくて苦しくて切なくて。
今でもよく夢に見たりするんだ。俗に言う「悪夢」ってやつだ。後悔しているかって? いや、後悔はない。
確かに家出をしてしばらくの間は辛かった。でもそれもやがて快感となり、私もそれをいつの間にか楽しんでいた。
でも戻りたくはない。それはただ「諦めていただけ」なのだから。ただ楽になりたかった。ただそれだけのことだったんだ。
昼休みになった。私は美波と昼ご飯を食べていた。
「なんかさ。最近、茉乃と星野くんってよく遊んでるよね。この前は全く興味ないって言ってたくせにさ。」
「今でもそうだよ。恋愛対象としては見てないし。ただ気が合ってるから仲良くしてるだけ。」
嘘はついてない。星野くんと私は確かに気が合っている。うむ、よく考えてみたら少し違うような気もするが、一応私のことを黙ってくれているみたいだし、気が合っていると言っていいんじゃないかな?
「本当かな? まあ、茉乃が嘘をつくとは思えないし、そう言うことにしとくか。」
「そもそも嘘をつく理由なんてないしね」
「あっ、そういえば岡本くんって知ってる?」
美波は急に話題を変えた。岡本くんかぁ。興味ないなぁ。誰だっけ? そもそもうちのクラスの人か?
「え、誰?」
「やっぱり知らないか。茉乃は誰だと思う?」
「いじめられっ子、でしょ?」
「正解! でも只者じゃないんだよ。多分うちの学校で友達はたった一人もいないと思うよ。」
「ちょっと酷いな。うちの学校でたった一人も? そんなに嫌われてるんだぁ。」
「そう。だからあんまり関わらない方がいいよ。」
「私があんな奴と関わるわけないじゃん。」
そうは言ったけどもちろんよく知っている。今度私が殺したいと思う人物だ。この前、私が廊下を歩いていると彼が相も変わらずイジメられているのが見えた。
でも私はあんまり関わりたくなかったのでさらっと無視をすることにした。だってあんなことに絡まっても良いことなんてない。ただ私もイジメられるだけだ。
そんなことはごめんだ。みんなそうだと思う。そうじゃないと言う人はただの馬鹿か偽善者でしかない、と私は思う。
話を戻すと私はその現場を無視して自分のクラスに入ろうとしていた。その瞬間、彼が私に「助けて! お願い!」と、私に助けを求めてきた。はっきりと思えてはないけれどそんな感じに言ってた気がする。
当然、私は「何で私が助けなくちゃいけないの? 私、こう見えて忙しいからあんたに構ってやる暇はないの。」とだけ言って自分のクラスに戻った。
正直、彼のことは殺したいとずっと思っていた。私がいちいち出しゃばらなくてもそのうち、自殺でもすると思うけど。だから今まで我慢してきたけど彼の姿を見るとなぜか殺したくてどうしようもなくなる。どうせ死ぬなら早めにやっても別にいいよね?
私は「ちょっとトイレ。」と言って教室から出た。そしてスマホを出して星野くんに「屋上にて集合。くじの時間だよ!」とメールを送った。
そして私は屋上に向かう。彼はまだ来てないようだ。私は何をすることでもなくただ空を見上げていた。
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