シークレットガール
澄みきっている空。青い色で染まっていた。私はどんな色? 人をたくさん殺しているから「赤」かな?
どうでもいいけどふと気になり始めた。浮かび上がる一つの疑問。人はみな悩むだろう。悩んで一つの答えを生み出すのであろう。
私がやっているのもそれとほとんど同じだ。ただ私は知りたいだけなんだ。まあ、こんな気持ちを理解してくれる人なんてそうそうないと思うけどね。
あれから数分経ってから彼が来た。随分と急いで来たのかな?
「どうしたの? なんかちょっと疲れてるみたいだけど。」
彼は息を切らしながら言った。
「ちょっとな。そんなことより早くやろうぜ! 昨日から楽しみだったからな。」
「え、そうなの? なんかあんたって変わってるよね? 結構言われない? 変わり者だって。」
彼は少し考え込むように唸り声を出したが、やがて「俺が知ってる限り、言われてないな。一度もないぜ。」と答えた。
そうか。まあ、どうでもいいや。私は私の鞄から小箱を取り出した。そして数回振って彼に差し出した。
「はい、引いて。」
「へえ、自信あるんだな。それじゃ引くぜ!」
彼は勢いよくくじを引いた。私もくじを引いては小箱を鞄に入れた。
正直自信はない。でも今日はなんか良いことがありそうな、そんな気がしていたからきっと大丈夫だ。
恐る恐るくじを確信してみるとそこには「67」が書いてあった。ちょっと微妙だな。これじゃ負けるかもしれない! 私はさらっと彼に聞いた。
「ねえ、あんたは何が出たの?」
彼は「80だけど。」と答えた。負けた。完敗してしまった。ちょっと不安だな。彼が誰を指名するのか。まあ、約束は約束だし、今回は私が負けってことで良いや。
「私は67だからあんたの勝ちね。おめでとう。さあ、それじゃ教えてくれる? 今回、あなたが殺ってほしいのは誰?」
「なんだなんだ? もしかして拗ねたのか? くじなんかで負けて拗ねているのか?」
悔しい。そう思った。次こそは必ず私が勝ってやる! 何があっても。
私は彼をそっと睨んだ。まるで「そんなのはどうでもいいから早く指定してよ」って言っているかのようだった。実際そんなことを考えていたから間違ってはいない。
「わかったよ。俺が今回殺してほしいのは藤沼かおるだぜ。」
藤沼かおる。誰? 知らないな。名前を聞いたところでは女の子っぽいけど。なんか恨みでもあんのかな?
「そいつ、誰?」
「お前、知らないのか? 結構有名なんだけどな。」
「聞いたことないや。うちの学校じゃないんじゃない? 全然心当たりないわ。」
誰なんだろう。思い出せないなあ。そんなやつ、うちの学校に居たっけ?
彼はため息をついて、私の方を見ながら言った。
「あの、なんて言うかちょっとお金持ちなやつ、覚えてない?」
お金持ち。確かに居たな。興味が全くなくて忘れていたのかな。だって一緒に遊んでも全然つまらない気がしたから。話したことは一度もないかも。
「あー、確かに居たね。あのムカつくやつでしょ? なるほどね。そいつが殺したいのかー。」
彼はそっと笑みを浮かべた。ちょっと不気味だな。私ならそんな不気味に笑わないはず。
「そう、なんかムカつくじゃん? だからこの際、やっつけてやろうって思ったのさ。どう?」
私もそっと微笑んだ。いいじゃないか。なんか楽しそうだ。
「いいよー。楽しめるなら誰だっていいし。」
「お前ならそう言ってくれると思ったぜ! じゃあいつ決行するんだ?」
「多分来週になるんじゃないかな? 決行するにあたって色々準備するものもあるから。あんたと違って私は色々調べなくてはならないから。」
「あっ、そう。」
なんか少しイラついてるみたいだ。なんだよ。これでイラつくとかちょっと神経が細いな。そこまでする必要あんのかなあ。
まあ、とりあえず次の検証に向けて色々調べるか。いつも徹底的に調べて、色々準備するようにしている。
だって一度にやっつけないと、色々面倒くさいし、手間がかかる。
だから私は最初の検証以来、そんなことを繰り返している。お陰で休日でも休めないが、そんなことはどうでもいい。
なんか最近は楽しいな。検証も順調だし、絶好のパートナーとも巡り会えたし、最高だな。
私はそっと叫んでみた。叫びたくなったのだ。
「楽しくなってきたー!」
帰ろうとした彼はそっと後ろの方を向いては言った。
「なんだよ。びっくりしたじゃねぇか。それじゃあまたな。」
私もそろそろ帰るか。もうやることないし。今日やっても本当は良かったんだけど、まあいいか。
少し休もう。最近は全然休んでない気がする。休んでおいた方がもっと楽しめるような気もするしね、少しくらいは良いだろう。
休んでる間はだらだら過ごすとするか。あ、検証のこともちゃんと計画しないとな。
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