愛は惜しみなく与う⑦

「すごく簡単だった。お前が俺を好きだから簡単だった。言うことは聞くし、杏の事を吹き込めば、なんでも信じた。馬鹿みたいに」


サトルの言葉は、私を見下して、嘲笑っている。
そんなのお姉ちゃんが黙ってるわけもなく…でも私が一人で頑張ると言ったから、後ろでギュッと堪えてくれてる。

ありがとう


私のために怒ってくれてありがとう



「あの頃は頭がボーッとしてて、ちゃんと覚えてないの。なんで私は…死んだことになったんだっけ」


もう思い出せない。
なんでそんな事をしたのか。



「お前が言ったんだぞ?私が死んだとかならない限り、お姉ちゃんが後継者になることはないんじゃないかって」


そうか
やっぱり私が言ったんだね。最低だな。とことん嫌な奴だな。
救いようのない馬鹿だ


「家出すれば?って言ったら、それじゃあダメだって。まぁ死んだとなっても、杏が後継者になる確率は低かったけどな」


そういってサトルは私の後ろにいるお姉ちゃんをみてニヤニヤと笑った。

そう
私もそれは思っていた。

もし私が死んだとしても、お母様はきっと受け入れない。お姉ちゃんが継ぐといっても、言う事を聞かないだろう。
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