愛は惜しみなく与う⑦
倒れたサトルはまたふらりふらりと立ち上がる



「やっぱり、ますます欲しいよ」

「え?何?戦力的な話?」


サトルの言葉にまともに返していたら疲れるだけやから。



「なんだろうな、よく分からなくなってきた」



サトルはそう呟いて固まった後、突然着ていた服を脱いで上半身裸になる。なんやなんやと思ったその体には…

あまり見たくない傷跡が沢山あった


「これを初めて見て、目を逸さなかったのはお前だけだよ。」


いや、気持ち悪すぎて固まったか?
そうサトルは笑った。


目の前のサトルの身体には、子供の時につけられた傷なのか……目を背けたくなる跡がついている。



「これはな、随分前にナイフで彫られた。刺青なんて、そんないいもんじゃない。これは……俺を産んだ女が俺に刻んだ」


左胸あたりの傷


『シネ』


そこにはそう読める傷跡があった


心臓の少し上……それを…お母さんに…


「この辺はタバコを押し付けられてできた火傷の後だ。膿んで化膿して痒くて…掻き毟った記憶ならある」


そのまま見える範囲の傷を、サトルは指でなぞる
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