愛は惜しみなく与う⑦

あまりにも酷い傷で……

そんな昔の傷が呪いのようにサトルの身体に残る


杏…
そう名前を呼ぶ泉の腕をすり抜ける



「痛かった?」

「……忘れた。もう覚えてない」

「でも…何をされて傷付いたかは、覚えてるんやね」


サトルの心臓の傷に触れる

もう凹凸もなく、何年も前の傷は完治しているはず。でもどうして消えないのか

こんなにくっきりと……残るんだな



「今のは笑って話すことじゃないんやで?」


黙ってあたしを見ているサトルの心臓は、少し速くなった



「身体的な痛みとかって忘れるってゆうたやろ?でもさ、やっぱり心は覚えてるよな。サトルも……心の傷は消せへんよな」


一つ一つどうやってできた傷かをあたしに話したサトル。これは、助けてって言ってるんかな。

自分では分からへんうちに、ボロボロになってしまってるんやろうな。


手を差し伸べるべきではないことは分かってる。あたしの目的は復讐兼、正式な逮捕。

ここであたしがサトルの心に触れることをする必要はない。分かってるねんけどさ


あまりにもサトルが子供で繊細で、少し強く触れてしまえば、消えてしまう気がして…
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