愛は惜しみなく与う⑦
身体が思うように動かないから


どれくらい静止してたか。爆発音が聞こえてから5分くらいその場から動かなかったような気がする。


真っ赤だった視界は、灰色で…そして黒く、あたしの世界を濁していく


口開けてたと思う

少し経ってから、ようやく分かった


あたしらがいるところは大丈夫やった


下を見れば、あたしに押さえつけられているサトルが居た


水瀬は?

大丈夫やな。そこにいる


この屋上に来る前に、中でヤクチュウになってた人達も、水瀬が外に出してくれたらしい。

だからきっと、大丈夫や



「置いて行けばよかったのに」



一生懸命頭を動かしてる時に、あたしの下から小さな声が聞こえた


置いて行けばって、あの爆発の根元あたりにか?



「あたしをなんやと思ってんの?」

「さぁな。俺のこと殺したかったんだろ?」

「……うん。殺したかったじゃない。殺してやろうと思ってたよ」


まぁ、あたしがするべき事じゃなかったってだけや。 
そうする事によって報われる人が1人もいない事に気づけたから。



「なぁ、もう言いたい事ない?」



サトルの腕を引いて身体を起こさせる



この爆発は、非現実的すぎて、逆にあたしの頭をクリアにする。邪念もなく、これを上回るヤバい事が起きるなんて想像もできひんくらい。



だからさ



最後の話をしよう
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