愛は惜しみなく与う⑦
はじめて人の目を見て謝ったかもしれない。

杏は大きな目を丸くして固まっていた。


もう、全て吐いた
言いたいことは言った

心残りはない



「さぁ、行け。お前は俺と違って、未来があるんだろ」


固まって動かない杏の背中を押して跳ぶように促す。

少しでも自分に杏の興味が移って良かったよ。


充分だ



だったのに



どうしてこんな俺に与えようとしてくれるんだ?




「友達になろ」



杏は崖を向いていたが、くるりと身体を回転させて俺を見た。

そして右手をそっと差し出す


とも、だち?



「サトルと付き合うのとか、結婚とか、サトルの物になることは絶対ないし、今すぐ許すつもりもないけどさ」


杏の顔はどんどんゆるくなり、口角が上がった



「罪を償ったら、あたしと友達になろ。友達なら…話も聞いてあげれるし相談も乗れる。何かあったら支えになれる。だからさ……

生きてよ。逃げんといてよ。刑務所入って、何年かかるか知らんけど……


出てきてあんたが望むなら、友達になろ?」


な?そう笑った

ずっと見たかった杏の笑顔
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