愛は惜しみなく与う⑦
泉の言葉を聞いて、全員が押し黙る
杏は…そんなにヤバイのか?
「今夜…今日の夜が峠だと言われた。3階の高さから落ちたんだ。頭からの流血が酷かった。あとは杏の生命力に賭けるしかないと言われてる」
俺たちの間には、後ろのテレビで流れているニュースの音だけが聞こえた。
「そ、んな…お姉ちゃん」
「病院に居ても何もできない。だから俺は、杏の意思を、杏が望んだ未来のために、お前が泣き叫ぼうが嫌だと言おうが、お前には東堂に戻ってもらう」
驚きと戸惑いで涙は止まったのか、潤んだ目で妹は泉を見た。
「私、行きます」
手をギュッと握り何かを決意したような顔
これは…とりあえず大丈夫なのか
泉も大丈夫だと思ったのか、さっきとは声色を変えて話した
「お前は留学に行ってることになってる。今は明日のお前の誕生日会の打ち合わせで、1週間前くらいから、帰ってきてる」
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