愛は惜しみなく与う⑦

「冬馬が捕まる前に電話をしてきて、こっそり部屋を抜け出したと言え。心配で会いに行ったって。悲しくて現実を受け止めれなくて、ここに帰ってくるのが遅くなったと言うんだ。
お前はとりあえず現実を受け止めれないって顔をしておけ。」



「でもそれじゃあ…私が普通に東堂に戻れば、お姉ちゃんはどうなるの?行方不明のままなの?」


「杏がそれを望んだ。もはやお前の母親は、杏のことを思い出しもしない。分かってるだろ?変に杏の存在を出すな。それこそ、元に戻らなくなる」



何が正しいのか分からないな。
杏は、妹に戻って欲しかった。
だから、こうなるのはいいと思うけど。

杏は本当に……杏として母親に合わなくていいんだろうか。

会いたくない気持ちは分かる。分かるってか俺なら絶対会わない。


でも…な



「ちゃんと戻って、お母様のことも、私が面倒みます。でも……お姉ちゃんが元気になったら……私がお姉ちゃんとお母様を繋いでみせます」


さっきの泣いている時とは全くちがう顔を見せた。
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