愛は惜しみなく与う⑦
「ま、なんせ親に殺されかけた。邪魔だったんだろうな。別にこのまま死んでもいいかなって思ったんだけど、まだ死ぬには早い気がして。もっと色々なものに触れたら、何かこの心も動くかもしれない。そう思った。

だから、幼い頃、両親を殺した」


……は?

なんて?両親を、殺した?
驚きすぎて固まってしまう。
こんな内容を、まるで自分の出身地をサラリと答えるかのように話すサトル。


「といっても、殺せなかったんだけどな。殺す気しかなかったけど、まだ俺は10歳にもなってなくて、知識がなかった。
殺し損ねたから、施設に捨てられた。
そこで……周りに合わせて生きてみようと試みた。俺だって普通に生きれるんだぜ?」


普通に生きれると言ったサトルは、どこか悲しそうな顔をしていた。

両親に殺されるって、どんなんやろ



「かなしかった?」


「…馬鹿だな。感情が無いって言ったろ?」



隣に座るあたしの髪を掬い、ゆっくりとその指を毛先に滑らせる。

感情とは

無くなるもんなんか?
それって……自分で何も思わないようにコントロールしてしまってるんやろ?
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