愛は惜しみなく与う⑦
「せやな。でも、志木が危険な目に遭う時は、必ずあたしも一緒や。志木も守る。そう決めてる。傷つけようなんて思ってない。もしここで倒れたら、志木を担いで病院に連れて行く。あたしにはそれができる」
「離してよ!!」
杏様の手を振り解き、鈴はサトルの近くに戻る。不服そうな顔をして。
「ねぇ、手は出さないってルールなんでしょ?お姉ちゃん、ルールなんて守らないよ?」
サトルの腕にしがみ付いて杏様のことを話す鈴。杏様は鈴をただジーッとみて何かを考えている様子
鈴は分かってない。
私が杏様に傷つけられたことなんて一度もない。むしろ、私のことまでも守ろうと、いかなる時でも側に置いてくれた。
担がれるのは困りますけど…
こうやって私のことも気にかけてくれる杏様。そこには絆や信頼がある。
鈴に分かってたまるものか。
「ねぇ、サトル。聞いてるの?」
「うるせぇな。耳障りだ。杏の声が聞こえないだろ?いま…いい顔してるんだから」
サトルは鈴を強引に振り払い、杏様を舐め回すようにみる。
その視線は、何があっても逃さない。そう言っているようだった。