冬の花
12
映画公開初日の舞台挨拶が、
始まる。

初日にK県が選ばれたのは、
主演の私の出身県だからではなく、
この映画の監督がk県出身だから。


私は遠い昔、お母さんとこの映画館に来た事があると思い出した。

あれは、小学二年生くらいの頃か?


夏休み、アニメの映画を母と二人観に行った。

その時の記憶はもうかなり薄れてしまっているけど、
あの時映画館はとても大きく広く感じたけど、
大人になった今、
こんなにも小さかったのだと、
舞台に立って客席を見渡した時に思った。

300席くらいはあるのだろうか?

舞台挨拶が始まり、
一番初めに監督が司会者に促され挨拶をしている。

私は心ここにあらずで、
それを聞いていた。

私は、この仕事が終わったら、自首をする。

今のように、こうしてこんな華やかな場所に立てるのは、
これで最後。

あの日、阿部さんと会わなくて、父親が死ぬ事がなければ、
きっと今頃私の人生は最悪だったような気がする。

この数年間、本当に幸せだったのだと改めて思った。

もう、充分。

< 146 / 170 >

この作品をシェア

pagetop