冬の花
「俺がこんなにもあかりが好きなのに、
あかりは、この男の事を…」

そう鳴海千歳を睨み付ける阿部さんは、
今にもその引き金を引いてしまいそうで怖くなった。

私が何かを話せば、阿部さんはきっと鳴海千歳を撃つだろう。

先程から阿部さんの言葉は嘘ばかりだけど、
その言葉が本気なのは分かった。

「もういいや…。
俺がどれだけ思っても、あかりは俺を愛してくれない。
あの村からあかりが居なくなって会えなくても、
俺はあかりをずっと思って来たのに」

そう言って、もういいや、と、
阿部さんは、持っていた拳銃を自分に向けた。

銃口が阿部さんのこめかみ辺りに、触れる。

「辞めてっ!」

そう立ち上がろうとした瞬間、
また再び銃声が響いた。

私の顔に、阿部さんの血がかかる。

それは、目の前が真っ赤に染まるくらいの量。

阿部さんの体が、糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。

私は、そのまま足元から崩れ落ちた。

館内中、再び大きな悲鳴が響いた。

「阿部さんの言ってる事は嘘なの。
私も一緒に…」

そう叫ぶ私の口を、鳴海千歳が後ろから手でふさいだ。

「彼の思いを、無駄にするな」

耳元でそう言われ、私は口を閉ざした。

涙で、目の前の阿部さんの姿が、段々と見えなくなった。

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