冬の花
阿部さんは先程と同じように、父親と私の集めた石をブルーシートでくるんだ。


そして、ロープで縛って行く。



「そっち持って貰っていい?」


「…はい」


阿部さんがそのブルーシートの塊の片方を持ち上げ、
私がもう片方を持ち上げる。


雪と風が相変わらず容赦なくて、その作業がとてつもなく辛い。


二人で持っていても重くて、落としてしまいそうで、怖い。


阿部さんと二人湖へと近付き、
同じタイミングでそれを湖へと落とした。


この村に、大昔からあると言うこの大きな湖。


底が見えないくらいに深くて、濁りなのか暗い。


何故か、氷点下になるこの村の真冬でも凍る事もない。


村の人達は、その不思議をこの湖には神様がいると信じていて、大切にしているけども、
その反面怖がって全く湖に近寄ろうとしない。


誰かが、そんなこの湖には沢山の死体が沈んでいそうだと、冗談で言っていた。


死体を捨てるには、これ以上にない程に最適な場所だからだろう。

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