冬の花
「前は、誰を殺したのですか?」


思わずそう訊いてしまった後、後悔してしまった。


知る事が、怖い。


阿部さんは、過去に誰を?


そして、それは一人じゃないのかもしれない。


「そんな恐がらなくても、何人も殺しまくってるとかじゃないから」


阿部さんは私の考えてる事が分かったのか、そう言うと私を安心させる為に、小さく笑顔を浮かべた。


その表情は、いつもの阿部さんで、
その顔を見られて、私はとても安堵している事を感じた。


私の父親を殺してからの阿部さんが、ずっと別人のようだったから。

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