冬の花
「俺、人を殺した事、これが初めてじゃない」


小さな声でそう言う彼。


車内は外の雪の降る音が聞こえそうなくらいに静かだからか、
その言葉がハッキリと聞こえた。


「…はい」


そう返事する事で精一杯。


阿部さんがそう言う前から、
多分、彼はこれが初めてではないような気がしていた。


馴れている、とまでは言わないけど、
終始冷静な彼を見ていて、彼にとって私の父親を殺した事は人生最大の出来事ではないのだろうと。







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