いつまでも…片想い  若葉色

「あの、これ落ちましたよ」

 心地よいバリトンの声にもびっくりしたが、えっ!えっ!落ち着いた筈の暑さが 顔に一気に戻ってくる。


 頭の中で考えていた人が飲み物片手に目の前にいる。


 一瞬固まってしまったが 自分のハンカチと気付き 「 ありがとうございます 」と急いで受け取った。

 彼も空いている席を 探していたようなので、「 お一人ですか? 相席で良かったらどうぞ 」と咄嗟に向かいの席を促した。

「 いいの?ありがとう 」と目の前に座った。
 
 今までで一番近い距離と、 初めて観る私服姿にドキドキが止まらない 。凄くかっこいい……近くで見ても私の好みど真ん中だった…

  何か話さなくてはと 思いもするが 口下手な私にはハードルが高すぎる。


「 こんなに混んでいるとは思わなかった、 ハンカチ拾って良かったよ 」彼から声を掛けてくれた。

 ‘’ニコッ‘’と効果音が聞こえそうな程の爽やかな笑顔にドキッとした。

 体までビクッとしてしまい、変に思われてしまったかと心配しながら答える。

「 はい 私も予想外に混んでいたのでびっくりしました… 」

「 買い物?オレは友達と待ち合わせしてたんだけど 時間に遅れるからって連絡あって店に入ったんだ 」

「 あの 彼女さんですか? 」

「 えっ? 」

「 待ち合わせしている お友達って… 彼女さんだったら 相席していて誤解されたら申し訳ないので…」

「 違う 違う、高校からの友達で男だよ それにオレ彼女いないから大丈夫 」手を振りながら答える。

「そうなんですか?良かった…」

彼女いないの!顔がニヤッと緩みそうになってしまうので、急いでアイスコーヒーを 一口飲んで冷静を装う。

「えっ!……」

「あっ!あの、誤解されなくて良かったという意味です。すみません」

「そうだよな」ちょっと苦笑いの彼。

急いでいい繕った。

「 高校の友達ですか?私も先週帰省した時会って来ました。久しぶりで楽しかったです 」

「 帰省か… いい響きだよな、オレ地元がここで実家も近くだから帰省って縁がないんだよな…… 実家は遠いのか? 」

「 それほどでも無いです。電車で2時間ほどで着きま…」

ブルル…ブルル…ブルル…ケータイの振動音が彼のポケットから聞こえて、ケータイを確認している。

「 思ったよりも早かったな、友達がもうすぐ着くようだから行くね。席ありがとう 」と 残りのアイスコーヒーを飲み干して行ってしまった。

 あっという間だった!夢?私の妄想?
現実だよね!とても気さくな人で話しやすくて、私の中で加点されていく。余計に好きが高まった。
 
 今日は きっかけ記念日だ!思いがけず私の特別な記念日になった。
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