結婚はあきらめ養子を迎えたら、「お義母様大好き」と溺愛されています
 うちの子(仮)優秀だし、公爵家から支援されてるだとか情報漏れてなくても、優秀だし、優秀すぎて、誰かが嫉妬して酷いことすることだってあるよね。
 あ、親衛隊養成学校に通う人は信用できる人柄の人間だから大丈夫だとは思うけれど、でも……。
 何かあったらどうしよう。
 あれ?急に心配で胸がはちきれそうに……。
「だから、帰ってきたときに、戦場から無事に戻ってきたって気持ちになって、こちらはぎゅーってしたいこともあるんだけれど」
 ハンナの言葉が耳に響く。

 そうか!
 帰ってきた時、その時は、私からぎゅーって抱きしめよう。
 そうしたら、朝、一瞬体がこわばったことも無しになるはず。
 そうよね。うん。
 私も小さいころは、お父様が仕事から帰ってきたときには、走り寄って足にぎゅーって抱き着いてたもん。
 まって、この想像じゃ、私が子供の立場じゃないの。
 お父様は、私が帰ってきたときに、どうしてたかしら?
 ……まぁ、いいか。子供の立場だとか親の立場だとかは、置いといて。
 帰ってきてぎゅーも普通。
「ありがとうハンナ!じゃぁ、領地視察に行ってくるわ!」
 と、手を振ると、ハンナが引き留めた。
「お嬢様、ちょっとお待ちください」
 ちょいちょいと手招きされる。
 使用人が主人を手招きなんて本来許されることじゃないけれど、ここには私とハンナだけしかいないし、ハンナは足を骨折していて歩けないんだから、仕方がないよね。
 ハンナに近寄ってベッドサイドの椅子に腰かける。
「髪の毛が、跳ねてしまっていますよ」
 頭の後ろの髪の毛をハンナが整える。まるで、頭を撫でられているかのようだ。
 跳ねてる?でもメアリーがしっかり整えてくれたけれど……どこかでひっかけたのかしら?
 というあ、私、出がけにこうしてハンナに髪を整えられることが多い気がする。
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
 ハンナがニコリと笑う。
「行ってきます。お昼には戻ってくるわ」
 ハンナに手を振って部屋を出る。
 ……ああ、そうね。こうしてハンナには、身なりのチェックをしてもらうのが出かけるときの儀式みたいなものになっているんだ。家族とは違う、出かけるときの儀式。
 頭を撫でられるように髪を整えてもらうの、私、嫌いじゃないわ。
 ふ、ふふ。
 そうね。
 形なんてなんだっていいのね。
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