結婚はあきらめ養子を迎えたら、「お義母様大好き」と溺愛されています
 と、感動していたところ、料理長が1ッ歩前に歩み出た。
「リーリア様、アルバート様もおっしゃる通り、パンとお菓子の中間の位置になるこれらの品は画期的でしょう。他にもフルーツケーキのようにドライフルーツをラム酒をたっぷりしみ込ませたものをパンに練りこんで焼いてみたらどうかとか料理人たちも色々とアイデアがあるようです」
 ちらりと料理長が壁際に並んで緊張している料理人に目を向けて私の方を向いた。
「どうか、お菓子っぽいパンということで、菓子パン……特許の出願をお願いできませんでしょうか?」
 特許……か。
 アルバートが目を丸くした。
「レシピに特許を?それじゃぁ、真似して作れないんですか?」
「んー、まぁ、そうねぇ、普通はそうですが、うちは誰もがすぐに真似できるようなレシピの特許料を取って儲けようとは思ってないんですが……。逆にそう思う者たちもいるということは分かりますわよね?」
 アルバートが頷く。
「はい、むしろ、多くの者は特許を出すイコール特許料で儲けようということだと思います」
「そこが問題で……。特許料を払ってまで同じものを作りたいと思わないものだと、作らなくなるでしょう?例えば、この菓子パンたち。いいなぁと思っても特許料がかかるなら作らなくてもいいやと思うと、食の発展が遅れてしまいますわ。だから、公爵家では他の者に特許を取らせないために、特許を取るということなの」
 うまく説明できたかしら?
 俺が先に考えたんだ、真似するなみたいな問題だとか。
 特許を出さずに世に広めて、誰かが勝手に特許をとっちゃって、これからは特許料を払えみたいな問題とか。
 なんかいろいろごちゃごちゃめんどくさいことが世の中にはあるのよね……。
 というわけで、まぁ、ロマルク公爵家が特許を持っているということで、他の者が特許をとれないように押さえて、そのうえで自由に使ってねと。
「……知らないことばかりで……お金のためではなく、守るためにあえて特許を……」
 アルバートがちょっと顔を曇らせる。
「そうね、特許申請しておきましょうか。これらが外部に漏れてから、先にどこかで特許申請されちゃうと、これを苦労して作り出した貴方たちでさえ自由に作れなくなってしまいますものね」
 私の言葉に、料理長は頭を下げた。後ろの料理人も慌てて頭を下げる。
「ありがとうございます!」
< 76 / 90 >

この作品をシェア

pagetop