ハルモニア~甘い運命 After Storys~



「あ、修一さん、あそこです!」

都が一つのビルを指差した。
貸しスペースのあるそのビルの8階が会場だが、高所恐怖症の都は大丈夫なんだろうか。


エレベーターに乗り込み、軽く手を握ると、案の定冷たくなっている。

心配そうに見てしまったのだろう、都は俺の視線に気がつくと、ニコッと笑って言った。

「今日の幹事は、幼なじみと言っていいくらい長い付き合いなので、ちゃんと考えてくれてます。

大丈夫です」


──男友達と、長い付き合い。
都は男友達が多いと知っているし、それが都らしいところだとわかっているけど。

一瞬、モヤッとするのくらいは許して欲しい。

それを上手に隠して、笑顔を向ける。
──都は、自分が嫉妬される対象だと思ってもみないから、簡単なのだ──

「そう?なら安心だ。丁度いい時間になったね」

チン、と音がして、エレベーターのドアが開くと、会場入り口の手前の広いスペースに、一人の男性がいた。

到着音を聞いたのだろう、彼は腕時計を見ていた感じで下ろしていた視線をあげると、まず都を見て嬉しそうに笑った。

「みやっち、久しぶり!」

小走りで近寄って来た彼に、都も手を振りながら答える。

「アキ、今日はありがとう!
何だかたくさん集まってもらっちゃって悪いね」

「何言ってんの、みやっちの結婚とか皆祝いたいに決まってんじゃん!

梓とか加代とか、タケルまで来てんだぜ!」

「どこまで声かけてんの…小学校の辺りじゃないそれ……」

呆れたような声を出す都。
そうか、都は『みやっち』というあだ名なんだ。
そんな事を考えていると、都に彼を紹介された。

「修一さん、彼、小学校からの腐れ縁の伊沢 彬って言います」

「はじめまして、三上 修一です。
今日は色々と準備していただいて、ありがとうございます」

丁寧にお礼を言うと、アキラと言う彼はピキッと固まった。



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