揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
それから、時が経った。鬱陶しい期末考査も終わり、もうすぐ夏休みというある日。怜奈が急に、こんなことを言い出した。


「ねぇ鈴、一緒に海に行かない?」


「えっ?」


唐突な誘いに、鈴が驚いていると


「夏はやっぱり海だよ。開放的な気分にもなれるし、素敵な出会いがあるかもしれないじゃん。」


と目を輝かせて、怜奈は言う。


「このままじゃ、やっぱりだめだよ、鈴。高校生活は短い、グズグズしてたら、私達、あっと言う間に受験生だよ。そしたら、毎日また勉強漬けだよ。今年の夏休みはエンジョイしないと。」


「それは賛成だけど、海は・・・。」


と、対する鈴は煮え切らない。


「どうして?」


「だって、海って言うことは、水着になるんでしょ?それは・・・だめだよ。」


とんでもないとばかりに、首を振る。


「恥ずかしいってこと?」


と問う怜奈に、今度は強く肯いてみせる鈴。


「気持ちはわかるよ。私だって・・・別にスタイルに自信あるわけじゃないし。でも、そんなこと言ってたら、ビーチにはモデルさんみたいな人しか、行けないことになっちゃうよ。」


しばらく押し問答を続けた2人だったが、勇気を出そうよと言う、怜奈の言葉に、ようやく鈴は微かに頷いた。


次の問題は、その水着だった。小学生の時に、近所のプールへ行ったのを最後に学校の授業以外で、水着になったことのない鈴は、当然、スクール水着しか持っていない。


そこで、怜奈に引っ張られるように、ショップへ行ったのはいいが、売場を一望した途端


「私、帰る。」


と言い出した。


「ビキニばっかりじゃん。こんなの無理だよ、私。」


「そんなことないよ。こっちにワンピースもタンキニもあるよ。さ、選ぶよ。」


とガッチリ怜奈に腕を掴まれた鈴は、渋々と、売場に入った。


2人で、おっかなびっくり選んでいたら、店員が近寄って来て、いろいろお節介・・・いやアドバイスをくれた。


「高校2年生でしょ。だったら全然ビキニで平気ですよ。お二人とも可愛いし、むしろワンピースなんかじゃ、もったいない。」


と力説され、怜奈はその気になったが、鈴は


「いや、この露出はまずいです。こんな水着買ってったら、お母さんに怒られちゃう。」


と、尚もゴネていた。が、最後は怜奈と店員2人がかりで説得され、ついに観念した。


「ありがとうございました。」


満面の笑みの店員に見送られて、店を出たあと


「ねぇ、大丈夫だよね?派手過ぎてないよね?」


と尚も、不安げに聞く鈴に


「大丈夫、だよ。」


と答えた怜奈の顔も、あまりハッキリはしていなかった・・・。
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