揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
話が、遠回りしてしまった。


かくして、あまりキャピキャピしていない女子高生2人が、かなりの勇気を振り絞って、ビーチに足を踏み入れたわけだが、本人達がおどおど、ドキドキしている割に、ビーチでの注目が、特に彼女達に集まることはなく、時間は過ぎて行く。


女子高生が2人でいれば、ナンパとかされて、そしたらどうしようとか、想像はたくましくしていたのだが、すっかり拍子抜け状態。


恥ずかしいなんて意識は、いつしか雲散霧消し、気がつけば、海水浴を結構、純粋に楽しんでしまっていた。


「私達って、全然イケてないんだね、やっぱり。」


「うん・・・。」


期待していたことなど、全く起こる気配もなく、ポツンと呟いた怜奈の言葉に、鈴は頷く。


「いっぱい泳いだから、お腹すいたね。なんか食べようよ。」


ガッカリしたような、でもなぜか少しホッとしたような気分になって、空腹を覚えた鈴は、怜奈を誘う。


「そうだね。」


まだまだ育ち盛りの2人にとって、色気も大事だけど、食い気も多分それ以上に大切だった・・・。


海の家に戻り、1回ロッカーに入った怜奈を待ち切れずに、焼きそばを買おうと、列に並んだ鈴。


順番が来て、注文し、いざ支払いをしようとして、ハタと気付いた。


(お財布、ロッカーじゃん・・・。)


食欲に負け、うっかりしていた。頼みの怜奈は戻って来る様子もなく


「すみません、お財布忘れました。取って来ます・・・。」


恥ずかしさを堪え、鈴が頭を下げて、レジを離れようとしたときだ。


「あ、いいよ。取り敢えず僕が立替えといてあげるよ。」


という声が後ろから。振り返ると、そこには柔らかな笑顔をたたえた大学生くらいの男の人が。


「えっ?」


「ロッカーに財布あるんだろ?あとで返してくれれば、いいから。」


「でも・・・。」


見ず知らずの男から、そんなことを言われて、戸惑いと警戒の色を隠せない鈴に


「遠慮しなくていいよ。別に立て替えるだけ、ご馳走するわけじゃないから。」


と爽やかに笑う男性。


「すみません、ありがとうございます。」


その笑顔に、吸い込まれるように、鈴は頭を下げていた。
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