青空が君を笑顔にするまで

まず、私と山崎さんの違いを一つ発見した。


呼び方。


私、“お前”。


山崎さん、“蘭”。


下の名前で親しげに“蘭”って何度も呼んでた。


仁はいつから山崎さんの名前を下の名前で“蘭”って呼び始めていたんだろう?


どうして、私は“お前”なの?


傷心者なのでそこまで聞けなかった。


なんだか私は少し焼きもちを焼いたというか腹が立ったというか。


帰り道、私はわざとさっき仁に話したばかりの小学校の時に好きだった人の話をずっとした。


そう名前の中に“だ”が入っている人の話ね。


仁、時々眉間に軽くしわを寄せて恐い顔になる。


仁は表情に出やすい。


仁は私が昔好きだった人の名前を“そいつ”と呼ぶ。


仁、たぶん焼きもちを焼いていたんだと思う。


そう考えていたのは私の独りよがりかな。


少し仏頂面な私。


これは、私の可愛い仕返しだと思ってください。


私は仁の口から“蘭”って聞いた時。


もう、終わったなと思った。


山崎さんと“今度二人で会う”って仁から聞いた時はとどめをされたような感じがした。


私は山崎さんが仁のことを好きなのを知っていた。


仁の理想に近い人はショートカットで眼鏡をかけている女の子、それはきっと山崎さんだ。


私はもう仁と会うのはこれで最後にしようと思った。


もちろん、ラインや電話もね。


私は山崎さんの話ばかり続けている仁の顔を笑顔で見上げた。


私は心の中で泣きながら「仁、バイバイ。仁、バイバイ……」って何度も言った。


私が昔好きだった人の話をし終えると、決まって仁はまた山崎さんの話をする……。


私と仁はきっといつまで経ってもこんな事の延長線で、忘れた頃にきっと同じ事を繰り返すだろう。


仁、私は今日の“お出かけ”が少し楽しくなかった。


私はちょっとここにはいてはいけないような気分になった。


仁は誰にでも平等に優し過ぎる、その優しさが時に私を傷つける。


──仁のバカ。

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