青空が君を笑顔にするまで

「私、仁に話さなきゃいけない事があるの……」


私は声を何度も震わせながら産婦人科へ行っていた話を仁にした。


「仁、私、私ね……。子供、産めないかもしれない…………。いやだ……、私、子供を生みたい……」


「──俺も、この先の未来に生まれる俺達の子供の顔を想像したことがあるけれど……。俺はお前が大事だ」


仁の声がかすかに震えていた。



「……私は仁の子供を生みたい。私達の間に出来た子供をこの両手で抱っこしたい」


私は子供が大好き。


大好きな人の子供を生みたい。


──私は仁の遺伝子を残したい。



「だけど、俺……、今はお前が一番大事なんだ。こうやって、お前が俺のそばにいるだけで十分。俺がプロポーズをした言葉をまだ覚えてる?」


「うん」


仁のプロポーズの言葉、忘れられるはずがない。


『それじゃあ、俺はお前が悲しそうな顔をした時、いつも笑っていてくれるように青い空になる。

もしも、辛い事ばかりが起きた時は俺は闇の中で一筋の光になる。だから、俺を信じて──』


仁が強い眼差しで私の顔をじっと見た。


「俺はお前の青い空になり、一筋の光になる。俺達、一緒に思い出をこれから沢山作ろう。そして、一緒に年を取ろう。一緒に生きよう」


仁が優しく微笑んだ。


「…………仁」


──“お前が一番大事”。


この言葉が私の背中を押した。


私達はこの両手で自分達の子供を抱く夢を諦めた。


神様は時に味方で、神様は時に残酷。

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