青空が君を笑顔にするまで

「ハル、……それだけ?」


「あと、手を振ってくれないの……」


「えっ、うそでしょ!?」


「うそじゃない」


「じゃあ、私が手を振ってみようかっ?」


さっそく、私の返事を待たずに希美ちゃんが仁に手を振った。


少し離れた席にいる仁がすぐに手を振り返した。


私は瞬時に言葉を失った。


なんだ、希美ちゃんにはちゃんと手を振り返すんじゃないの。


やっぱり、凄いね幼馴染みからの“絆”って。


──ふんっ、ふんっ!


別に怒ってないし。


べ、別に焼きもちはやいてないよ。


ただ、良いなって思っただけだよ。



私、私はやっぱり素直じゃないから、今泣きそう。


そんな私を知らない希美ちゃん。
 


「ハルも手を振ってごらんよ。私に手を振ってくれたから。仁、絶対に振り返してくれるよ!」


私は顔を横に振った。


「いいよ」


「どうして?」


「……やめとく」


「絶対に、絶対に大丈夫だって!ほらっ」



「うん」と静かに私は頷いた。



全然、乗り気ではない。



仁と目が合った。



渋々私は仁に低くして手を振った。


見事に私はスルーされた。


あっけない。



「ハル、……仁、どうしてなんだろうね。あんまり、気にしない方が良いよ」


希美ちゃんの精一杯の励ましが伝わる。


心が痛い。

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