君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
「ねぇ、綾香。」


「何々?」


「中野 神弥って、王子様みたいなの?」



私が聞くと、綾香は一瞬首を捻って考える素振りを見せる。


が、すぐに満面の笑みを浮かべる。



「分っかんない。だって興味ないんだもん。中野くんの声が良かったなら別だけど。」



そう言ってフワリと笑う。



「相変わらず、綾香は声フェチなんだね…」


「うん!声が良ければ全て良しだよ!」


いや、それはどうかとは思うよ、綾香さん。


「…中野 神弥はダメな声なの?」


「んー、ダメって訳じゃないけど…」



顎に手をあて、真剣な顔。



「私の理想の声よりちょっと高めなの。」



言うと、オレンジジュースの入ったコップを手にとる。


――声フェチな綾香。


これも、綾香に彼氏がいない理由。


理想の声の人が現れないから、モテるのに誰とも付き合っていない。
< 17 / 385 >

この作品をシェア

pagetop