君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
「は?」


「は?じゃねぇよ。花菜は来ねーよ、待ってても。」



あー、蒸せる!などと言いながらウィッグを脱いだ神弥は、ドカッと拓海の隣に座る。



「何で…。花菜と約束したのに…」



ガクリと項垂れる拓海。


すると神弥は鼻で笑う。



「なーにが約束だ。一方的に言っただけだろ。」


「一方的じゃな……っ」


「なぁ、気づけよ。花菜はもう、前に進んでんだよ。アンタが振ったんだか振られたんだか知らねーけど、花菜はアンタがいない人生を歩いてんだよ。」



はーっと息を吐いて上を向く神弥。



「自分には花菜しかいない?アホなこと言ってんじゃねぇ。花菜はアンタじゃなくてもいいんだよ。自己中な考えで花菜を縛り付けんな。」


「…っ…」



拓海は悔しさに唇を噛む。
< 236 / 385 >

この作品をシェア

pagetop