君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
この、声は……っ



「《遠藤…》」



情けないことに、携帯を持つ手が震える。



「架琉くん…?」



綾香が心配そうな面持ちで俺を見る。



《そう、遠藤 帝(エンドウ ミカド)。嬉しいな、覚えててくれたんだ。》



遠藤の声に吐き気が襲う。

あれは、ほんの出来心だったんだ。


言うなれば、魔が差した。

少しだけ困らせてやろうとついた、俺の嘘。



《ねぇ、八神くん。》



まさかあんなことになるなんて、思わなかったんだ。


《***大学に通ってるんだよね?……神弥くんも一緒に。》


「《ハ、ハァ……ッ》」


「架琉くん?!」



胸が…苦しい。


呼吸が儘ならない。



《迎えに行くって伝えてね、神弥くんに…――》
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