ある冬の日の物語



「陽斗くん!?」

「うるさい」

「え?」

「さっきからうるさいんだよ。お前」

「わ、私はただ陽斗くんが……」

「お前は蝶子と俺の何を知ってるんだよ!お前は蝶子じゃないし蝶子はもういないんだよ。知ったような口を叩くんじゃないよ!!」


あまりのことで陽斗は激昴した。

我慢が募りに募って大爆発したのだろう。



ずっと我慢してきた。

ずっと耐えてきた。

幸せな日常が一変して鮮やかな世界が真っ黒に染まった。

あの時、陽斗は蝶子と一緒にいた。

学校の帰り道だった。

いつものようにふざけて走り回っていた。

いつもと違っていたのは陽斗が道路に飛び出してしまったのだ。

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