&フィクション
「なんで今日は、来てもいいって言ってくれたの」
あたしたちは、時々ふたりきりになる。けど。べつに。
何があるわけでもない。
他愛ない話して、笑って、無表情になって、まあ、こんなもんかなと思う。
いつもは外なのに、『うち来る?』なんて、突然、何事だ。
「暑いから」
「暑いの、きらい?」
「暑いのに、ちょっとずつ涼しいから」
──怪訝な顔をしたな。自覚する。
「爪、切る」
爪切りを持って、こっちに帰ってきて。でも結局、床に胡座。
「死にたくならねぇの?」
なんでもないふうに、たったそれだけをあたしに聞いて、爪を切った。
「な……らない」
「ふぅん。じゃ、おれら、わかんないね」
それ、分かり合えないってこと?
それとも。
「暑いのに、ちょっとずつ涼しい──夏の終わりかけ、きらいってこと?」
夏の終わりかけは、夏が終わるからいうのか、秋が始まるからいうのか。
夏か秋か、わかんないね。そういうことなの。
誠。
あたしをおいてかないでよ、ねぇ。