冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】

突然の彼女の行動には驚いたが
ギリギリのところで反射的に避けられた。

しかしグラスはそのまま窓に叩きつけられ
割れた勢いでワインと粉々になった破片は
辺りに飛び散ってしまう。

幸い、窓は強化ガラスだったため無傷。
けれど床も絨毯もワインの赤色が染みていき
鮫島は自分の仕出かした事態に目が覚め
言葉を失っていた。


室内に響いたその音は
シバ社長の耳にも届いていて…


「なんの音だ!?」


焦りと驚いた様子で
勢いよく戻ってきた。


「シ…シバ社長…」

「社長、すみません。
 手が滑ってしまい落としてしまいました」


真っ青な顔で呆然と立ち尽くす鮫島を
フォローする形でイトカが口を挟み
床に散らばった破片を集め始めた。


『落としたにしてはワインが窓から滴り落ちるのはおかしい』と
窓に目をやりながら疑問に思った社長。


「…ケガするからやめろ」


スッと腰を屈めイトカの手に軽く触れると
拾うのを止めさせた。


「でも社長…」

「いいから。
 後は俺がやる」


破片を拾う社長の横で
鮫島は自分のせいだと知りながらも
弁解する事も、声すら出さずに俯いていたが
彼は何も聞かずこの場を収めた。
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