冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】

社長の豪邸に居候を始めて3か月。
全体的な空間の広さには慣れないが
『食事をしっかり摂れ』との社長命令から
台所を借りて自炊をするようになった。



―――日曜
その日は珍しく社長も仕事が休みで
自宅でのひと時を過ごしていた。


「お前それ、まさか…」

「ん?ドーナツですけど?」


『見てわかりません?』と首を傾げながら
手作りしたドーナツを見せてくるイトカに
社長は憎悪の眼差しを注ぐ。


「絶対ワザとだろ。
 悪意しか感じないぞ」

「やだなぁー社長ったら。
 婚約者としての愛情ですよ、愛情。
 甘いモノ食べて
 少しは優しくなってくださいよー」


『俺を殺すつもりだな』と
ブツブツ言いながら珈琲を飲む社長に
『デザートにどうぞ』なんて嫌味を言いながら
穏やかに平和そのものなやり取りをしていたのに…


テーブルに置いてあった社長の携帯が震え――


「…またか」


着信相手を確認すると
急に顔をしかめ、そう言い残し
携帯を持ったまま台所を出ていってしまった。

こんな事が数日の間に度々あり
その都度、社長の様子が妙な事に
イトカは胸騒ぎを覚えていた―――
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