冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】
「な…んで…」
『どうしてそんなに優しいの?』
そう言いたかったが
イトカは言葉に詰まってしまった。
社長の言葉に、声や表情に…
『離れたくない』って想いが強くなり
気持ちが揺れ、覚悟がブレそうになったから。
だから何も言う事が出来なかった。
社長は、まるでイトカの質問に答えるかのように
穏やかに続ける。
「お前と婚約を解消すれば
”社長”として
この場に残れるかもしれない。
だがな…
俺は往生際が悪い。
お前を残すための他の方法を考えてしまう」
「…どうして、そこまでして…」
彼女の疑問に
社長は沈痛な表情で答えた。
「俺がお前を…
失いたくないからなんだろうな。
だからどうしても…守りたいんだ」
と―――
そんな言葉を言われてしまえば
今まで我慢し堪えてきたモノが
一気に溢れだす。
「…ッ」
後先なんて考える前に体は自然と動き
イトカは社長を抱きしめていた。
「木瀬…?」
「社長のバカ…
なぜ今それを言うんですか。
せっかく覚悟を決めたのに…
コレじゃ…台無しです」
強く抱きしめながら
言葉も涙も止まらない。