可愛い弟じゃいや。
授業が始まって、ノートに板書を写そうと思ったら、筆箱にシャーペンがない。

多分昨日、かんちゃんの家に忘れたか、かんちゃんが間違えて自分の筆箱に入れちゃったかな?

昨日は学校から帰ってから、かんちゃんに勉強教えてもらってたから。

その時かも。

まぁいいや。

前の席の人に話しかけ、シャーペンを貸してもらう。

別に板書なんて書かなくても勉強できるし、いんだけどね。

学年トップだし。

なのにかんちゃんに勉強教えてもらってる理由は、かんちゃんと一緒にいたいから。

学年違うから、俺がトップなのも伝わってないし、かんちゃんに順位聞かれた時、75位って嘘ついた。

かんちゃん、天然で可愛いくせに、5位くらいだから、それを聞いて、一生懸命教えてくれようとした。

でも、かんちゃんの邪魔はしたくないから、怪しまれない程度に2問くらい教えてもらって。

後は教科書読みながらやってるフリして、普通に解いた。

休み時間になって友達がしゃべりに来る。

まぁほとんどからかいに来るだけなんだけど。

すると、急に廊下が騒がしくなった。

男子らが騒ぐ声。

そんなに興味がなかったからほっといたけど、

教室のドアの方から声がした。

「たっちゃんいますか?」

かんちゃんの声。

さっきまで話してた友達への態度とはコロッと変えて。

「かんちゃん?
どーしたの??」

とドアの方へ向かう。

みんながニヤニヤしてんのは知ってたけど、
無視。

「これ、たっちゃんのシャーペン、だよね?
私、間違えて自分の筆箱にしまっちゃったみたいで。」

言いながら、シャーペンを渡してくれた。

「やっぱ、かんちゃんが持ってたんだ!
わざわざありがとっ」

ニコッと笑ってお礼を言う。

クラスでこんな顔したことないし、かんちゃんの前でだけしかしなかった表情。

だから周りがすっごい驚いた顔してたけど。

すぐにみんながかんちゃんに話しかける。

「間違えてしまったって、一緒に勉強でもしてたんですか??」

と、質問されたかんちゃんは、

「そうだよ。
たっちゃんに勉強教えてって言われて。」

と、にこやかに答える。

するとみんなが、えっ?、って顔をした。

やばい。

当たり前だけど、みんなは俺が学年トップなの知ってる。

「かんちゃん、みんなにバカなのバレちゃうの恥ずかしい…。ないしょにして…!」

小声で言ったのに聞こえてたらしい。

その言葉にみんなは反応する。

「かんちゃんじゃなくて、柑奈先輩っ、でしょ?」

ニヤニヤとうぜぇ。

「え?
そんなのいいよっ、たっちゃんに先輩って呼ばれるのはちょっと、恥ずかしいし…。」

焦ってるの可愛い。

俺は近くの椅子に座ってわざと上目遣いした。

「柑奈、せんぱい…。」

なんてなっ、って言って終わらせるつもりだったのに、なんか、

割と恥ずい……

キャー!

周りの女子の声が響く。

うるさっ。

急になんだよ。

かんちゃんを見ると、


すっごい顔が赤くて。

下を向いて隠そうとしていた。

それを見た周りの男子らは固まる。

そりゃさ、こんな顔見たら固まるよな。

でも、こんな顔したかんちゃん、他のやつに見られたくない。

と思ってかんちゃんを連れて、教室を出ようとしたとき。

ギュッ。

え…?

急にかんちゃんが俺を抱きしめた。

そして、耳元でつぶやく。

「今のはちょっと…、むり。」

は…?

びっくりしすぎて素が出るとこだった。

「かんちゃん…?
どしたの?」

聞いても返事こない。

え?

俺、どーすればいいの?

めちゃくちゃいい匂いするんだけど

香水とかじゃない、シャンプーかな?
















飛びそう…。












理性。



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