可愛い弟じゃいや。


そっとかんちゃんを抱きしめようとした時、

―――キーンコーンカーンコーン―――

授業5分前のチャイムが鳴った。

ふと我に返ったのか、いきなり俺から離れたかんちゃん。

「あっ、ごめっ…。
じゃあまた、帰り、ね。」

それだけ言うと、教室を急いで出ていってしまった。

さっきまで感じていた温かい熱がふっと消えていく感覚。

あっ……。



離れないで欲しかったな

って、

何考えてんだ俺。

授業あんだから、離れるに決まってんだろ。

たくっ

ただのキモイやつじゃねぇか。

なんて、一人で考えて一人でつっこむ。

すると

「あーあ、柑奈先輩、行っちゃったな。」

名残惜しそうにつぶやくクラスのやつら。

何お前らが名残惜しそうにしてんだよ。

すぐにそんな考えが出てくる。

ガキか!

「てか樹城さぁー、さっきのはヤバくね?」

急に俺に話が振られる。

「は?何の話?」

ヤバいってなんだよ。

かんちゃんにだけ態度変えてんのは知ってるはずだろ?

「いや、なんて言うか…。
柑奈先輩の名前呼んだ時さ、女子ヤバかっただろ?」

ちょっと周りを伺いながら言ってくるから何かと思ったわ。

「かんちゃんが可愛かったからだろ?」

いつもの事じゃん。

急に改まって何言ってんだ?

「いや、絶対ちげーよ‪w」

「お前に向けてだろ、あれは‪w」

半笑いしながら言ってくるし、意味わかんねぇ。

「俺あの時上目遣いしただけで顔作ってねぇよ‪w
割とガチで恥ずかったんだからさぁ。」

なんてよく分からん会話をしてたら、

―――ガラッ―――

教室の扉が開き、先生が入って来たから、みんなが席に着いた。

もちろん俺らも。
< 5 / 12 >

この作品をシェア

pagetop