可愛い弟じゃいや。
そっとかんちゃんを抱きしめようとした時、
―――キーンコーンカーンコーン―――
授業5分前のチャイムが鳴った。
ふと我に返ったのか、いきなり俺から離れたかんちゃん。
「あっ、ごめっ…。
じゃあまた、帰り、ね。」
それだけ言うと、教室を急いで出ていってしまった。
さっきまで感じていた温かい熱がふっと消えていく感覚。
あっ……。
離れないで欲しかったな
って、
何考えてんだ俺。
授業あんだから、離れるに決まってんだろ。
たくっ
ただのキモイやつじゃねぇか。
なんて、一人で考えて一人でつっこむ。
すると
「あーあ、柑奈先輩、行っちゃったな。」
名残惜しそうにつぶやくクラスのやつら。
何お前らが名残惜しそうにしてんだよ。
すぐにそんな考えが出てくる。
ガキか!
「てか樹城さぁー、さっきのはヤバくね?」
急に俺に話が振られる。
「は?何の話?」
ヤバいってなんだよ。
かんちゃんにだけ態度変えてんのは知ってるはずだろ?
「いや、なんて言うか…。
柑奈先輩の名前呼んだ時さ、女子ヤバかっただろ?」
ちょっと周りを伺いながら言ってくるから何かと思ったわ。
「かんちゃんが可愛かったからだろ?」
いつもの事じゃん。
急に改まって何言ってんだ?
「いや、絶対ちげーよw」
「お前に向けてだろ、あれはw」
半笑いしながら言ってくるし、意味わかんねぇ。
「俺あの時上目遣いしただけで顔作ってねぇよw
割とガチで恥ずかったんだからさぁ。」
なんてよく分からん会話をしてたら、
―――ガラッ―――
教室の扉が開き、先生が入って来たから、みんなが席に着いた。
もちろん俺らも。