転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
悔しくて悲しくて、涙が止まらない。レヴの顔をしっかり見たいのに、涙で滲むのがますます悲しかった。

「……サマラ……俺のこと……忘れないで……――」

「レヴ!!」

一陣の風が吹き、輝く砂となったレヴをさらっていく。
サマラの手もとに残ったのは、石化した結晶――レヴの核となっていたディーの血と魔力を結晶化したもの――だけだった。

「――っ!! レヴー!!」

レヴの核を握りしめてサマラは号泣した。
茜色に染まった夕暮れが、サマラの涙を黄金色に輝かせる。
ディーは言葉もなく、こぶしを握りしめてサマラを見つめていた。
静まり返った瓦礫の中で、サマラの慟哭だけが響いていた。

「嫌だ……助けて、誰でもいい……妖精でも精霊でも神様でもいい……レヴを返して……。お願いだからレヴを返して! レヴを助けて!!」

――サマラの悲痛な叫びが空に木霊したときだった。
フッと温かさを感じた手が淡い光を放ち、それはみるみる大きな光となって手から溢れだす。

「え……?」

白く眩い光はやがてサマラとその周囲を囲み、辺りをも清浄な光で照らし始める。
サマラの心臓が大きく跳ねた。この光景は、見たことがある。これは――。

「……奇跡の……光……」

ゲームのクライマックスでリリザが愛するヒーローを救うときに、『奇跡の光』を発動させたムービーと同じだ。
まさか、という思いで目を瞠るサマラの眼前で、まさに奇跡が具現化される。

抱きしめていたレヴの核が赤く色づき、鼓動を打ち始めた。まるで、人間の心臓のように。
サマラの発した白い光が核の周りに集まり、それはやがて形を作っていく――人の、レヴの形を。

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