転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
ディーより随分年配のように思えるが、ディーはそっけなく「ああ」と答えただけで、あまり歓迎していないのが窺える。

「おや？　ご息女もご一緒だと窺ったのですが」

ザハンがそう言ったのを聞いて、サマラはドキッとした。隠れていることに罪悪感が芽生える。
しかしディーは淡々とした口調で「屋敷へ帰った」と嘘をついた。そこまでして会わせたくない相手なのかと、ますます気になってくる。

「それは残念。ぜひお顔を拝謁したかった。閣下のご息女ならばさぞかし素晴らしい魔法使いになるのでしょうな」

いかにも社交辞令の褒め言葉なのに、やけに背筋がゾワゾワした。姿は見えないけれど、きっとヒキガエルみたいな顔をしているに違いないとサマラは確信する。すると。

「――娘をお前らに会わせるつもりはない。娘に近づくな。これは警告だ」

あまりに冷たく威圧的なディーの声に今度はサマラの背が凍りつきそうになった。さっきのザハンの声に感じたのが嫌悪なら、今のディーの声は恐怖だ。まるで言うことを聞かなければ魂を取られてしまうような呪いの魔法でもかかっている気がする。

それほどまでに恐ろしい威圧を掛けられたというのに、ザハンは飄々とした口調で「おやおや、随分とつれないお言葉で」と、怯む様子もない。

しばらく沈黙が流れた。扉の向こうは見えないけれど、ふたりが睨み合っているような気がした。
ややして先に口を開いたのは、ザハンの方だった。

「ご息女へのご挨拶はまた改めましょう。ご息女も我らの眷属ならば、いずれ出会うことは必然。……いや、因果と申すべきですかな」

< 77 / 200 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop