新人ちゃんとリーダーさん

 鬼頭さんの視線が鋭い。そう感じたところで、はたと気付く。私の真後ろに居るハリーさんは鬼頭さんの位置からだとちょうど私が邪魔になって見えない、という事に。

「あ、ごめんなさい鬼頭さん。見えなかったですよね」

 立ち上がり、横にすすすと捌ければ、視界が開けたはずなのに何故か鬼頭さんは「あ?」とこれまた低く母音を吐き出す。
 数秒の静寂。そして鬼頭さんの視線が、ハリーさんの元から捌けた私へと移動する。

「……ハリネズミ、飼ってんだな」
「え?あ、はい。あれ?でも、さっき、」
「何で今見せられてんのか意味分かんねぇけど、なぁ、おい、九頭見」

 相も変わらず低い音を吐き出しながらゆらりと立ち上がった鬼頭さんは、たったの一歩でこちらへと詰め寄って来て、がしっ!と私の頭を掴んだ。

「っは、ひ、」
「どこにいんだよ」
「え」
「どこに、いんだよ」
「え……え?」
「っだから!てめぇの!男!クズで!ヒモで!パラサイトなてめぇの彼氏様はどこにいんだって聞いてんだろうがくそが!ケリつけっから出せや、なぁ、結愛ちゃんよぉ」
「…………は、はい……?」

 唸った。かと思えば、叫んだ。そして気付いた。鬼頭さんの麗しいお顔が目と鼻の先にある、という事に。
 っはぁあああ!格好いい!
 なんて言っている場合ではない。
 え待って、今、鬼頭さん、何て言ったの?え?彼氏様?クズでヒモでパラサイトな彼氏様?

「はい?じゃねぇよ。なぁ、言ったろ、俺は。譲る気なんかねぇ、って」
「いや、あの、」
「出せや」
「ちょっと、あの、待って下さい、あの、」
「待たねぇ」
「いやあの、だから、」
「出せや」

 いや「出せや」と言われましても。居ません、居ませんよ、そんな人。

「んで決めろ。そいつか、俺か」
「………………はい?」

 なんて言葉は、続けて吐き出された鬼頭さんの言葉によって場外へと投げ出された。
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