新人ちゃんとリーダーさん

 は。
 はあぁああ!?

「は、な、嘘じゃないです!ていうか、鬼頭さんこそ、私だからとか嘘つかないで下さいよ!好きな人いるくせに何なんですか本当!」
「あ?嘘なんかついてねぇわ!つうかまだ気付かねぇんかよ!てめぇだわ!てめぇ!九頭見結愛!俺が好きなんはてめぇだわ!鈍過ぎんだろうがよくそが!」

 あったまきた!
 そう思って、深夜だなんて事も忘れて怒鳴りつけたら、怒鳴り返されて、ひゅ、と喉が鳴る。
 え、今、鬼頭さん。

「……くそ。だせぇ、」
「……」
「……」
「……」
「…………なぁ、」
「…………は、い、」
「本当に、いねぇのか、男」
「いっ、いま、せん、」
「なら、一緒に住んでる彼に家買ってあげたいとか、ご飯用意しなきゃとか言ってたのは何なんだ」
「……そ、れは、ハリーさん、の事、です」
「……飼ってるハリネズミか?」
「……はい。去年、うっかりハリーさんの可愛い自慢をしたら友達が連日押し掛けてきて、ハリーさんハゲちゃったんです……それからはずっと、ハリーさんの事、彼って呼んでハリネズミだってバレないようにしてたんです」
「……薬指のは、何でつけてんだよ」
「こ、れは、父が、すっごく、過保護で……バイトを、させ、てもらう、条件のひとつ、で、」
「……男避けか」
「う、は、い」
「……」
「き、鬼頭、さん、」
「……んだよ、」
「わた、しも、っ好き、です」

 声が震える。
 駄目だ。泣くな。
 ぐっと目頭に力を入れて、視界を覆おうと躍起になっている水分がこぼれ落ちてしまわないように堪える。

「……は、嘘だろ、」
「嘘じゃない、です。私、わたっ、し、」

 けれどそんなの知らねぇよとばかりに、そいつらは頬を伝ってぼたぼたとこぼれ落ちていく。恥ずかしい。ぐいっと目元を拭えば、「やめろ腫れる」と腕を掴まれて、そのまま引き寄せられた。

「……両想い、って事でいいな」

 ぎゅう、と背中に回された鬼頭さんの腕に力がこもる。額が、頬が、鬼頭さんの胸元に密着していて、これはこれで恥ずかしい。けれど、抱きしめられていたいという欲に負けた私は、こくりと頷いた。

「順番、違ったけど。俺と、付き合ってくれるか?」

 きゅ、とまた少し、鬼頭さんの腕に力が加えられる。両想いだとさっき確認したばかりなのに、それでも不安だと言いたげなそれがどうしようもなく愛おしくて、愛おし過ぎて、うう"~と汚い声が漏れる。

「っ、は、い」

 彼を好きだと気付いた三日、否、四日前。初めてのその感情を伝えられない事に絶望した。だって、迷惑でしかないと思っていたから。

「好きです、大好きです」

 だけどもう、遠慮はしない。
 カラカラとハリーさんがランニングしている音を聞きながら、そろりと私も腕を回して、愛しい人を抱きしめた。



 ー本編 終ー
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