偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
世間一般で言う、住む世界が違うとは、この人の事だろう。オフィスも高層階だから、普通は会うこともない。あの日はたまたま偶然通りかかって助けてもらえただけ。というか、もう2度とバッタリ会う事なんてない世界の人・・。ちょっぴり悲しくなりながら、名刺を裏返すと、携帯番号と連絡待ってますというメッセージが書かれていた。

えー???なんで?まさか?二日酔い女に??

ぐるぐると考えていると

「沢ちゃんっ!」

と声を掛けられた。振り向かなくても誰か分かった。

なんでいるの??出張は?

私は血の気が引く感覚に襲われ、体が動かない。
ゆっくり振り返ると
藤原さんがニコニコしながら

「やっと会えた!」

と言って、どんどん近づいてくる。私は精一杯平静を装って、何とか椅子から立ち上がり

「いつもお世話になっております。」

と返した。1週間前の出来事の時は、私は隠れていたので、あの場にいなかったことになっているからだ。

「急に仕事が入って出張は別の人に代わってもらったんだ!今日は沢ちゃんに会えないと思ってたからうれしいよ!」

と言って勝手に横に座って来た。私は急いでテーブルの上を片付けて
その場を立ち去ろうとしたが、気づかれたのか、ギュッと手首を捕まれた。
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