偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
「待ってよ!まだ話は終わってないよ。」

私は

「手、離してもらえますか?」

と、冷静に言ったが、無視された。

「時間がないので失礼します。」

と言って、何とか腕を振りほどき、立ち去ろうとしたが、再び腕を掴まれ

「待てって言ってるだろ!」

と怒鳴られた。私は恐怖で足が止まってしまった。

「どうして僕の気持ち分かってくれないのかなぁ?」

と言いながらじりじりと迫ってくる。
どうしよう…どうしよう…どうしよう…。恐怖のあまり視線が泳いでしまう。目を反らしながらも、私は勇気を振り絞り、この場をしのぐために嘘をつく。

「私、今付き合っている人がいるので、藤原さんのお気持ちには応えられません!」

と言い放った。
でも、藤原さんはピクリともせず

「彼氏いないことくらい調査済みだから。嘘はダメだよ」

とニヤリと言った。

調査済み??どういうこと?

「はい、嘘ついてもダメー。沢ちゃんは俺のものになるんだから。ねっ!」

そう言って両腕を掴まれ、気持ち悪い笑顔でさらに近づいて来たとき、背後から声が。

「無理だよ。風乃は俺のものだから。」
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