嘘吐きな王子様は苦くて甘い
俯いて黙り込んだ私の耳に、一宮君の遠慮がちな声が聞こえる。
「ごめん、大倉さん。俺余計なこと言ってるね…」
「ううん、大丈夫」
「えっと…上手く言えないんだけどさ。俺が言いたいのはつまり、石原君がどうとかいうことじゃなくて…これからもし大倉さんが誰かに告白されて、そいつが俺の友達が言ってるヤツだったら、また大倉さんが傷付くと思ったんだ」
一ノ宮君は、自分が余計なこと言ってるって思ってるのか凄く申し訳なさそうな顔をしてる。
「ごめん…」
「何で謝るの?一ノ宮君は何も悪くないよ」
「俺…大倉さんを守りたくて」
一ノ宮君の瞳が、遠慮がちに私を見つめる。その真っ直ぐな視線に私は思わず足を止めた。
「好きなんだ、大倉さんのこと」
「っ」
「ごめん、ビックリした?」
「う、うん…」
一ノ宮君は、誰にでも明るくて優しい人だと思ってたから。まさか自分が、一ノ宮君みたいな人に特別に思ってもらえてるなんて考えもしなかった。
だけど一ノ宮君の顔を見れば、その気持ちが嘘なんかじゃないってハッキリ分かる。
少し赤い頬と、キラキラした瞳。真剣な眼差しで見つめられて、私の心臓もドキドキと早鐘を打つ。
「こんな言い出し方ずるいって分かってる。大倉さんが石原君と別れてそんなに経ってないってことも。でも、どうしても押さえらんなかった。今すぐにじゃなくても、俺と付き合うこと考えてもらえないかな…って」
一ノ宮君の告白は、心臓の真ん中にストンと刺さった。
旭君とは、全然違う。
「…」
「大倉さん?」
私、最低だ。目の前にいるのは一ノ宮君なのに、頭の中に浮かぶのは別の人。
ーーひまり
ぶっきらぼうに私の名前を呼ぶ、今でも大好きなただのお隣さん。
「一ノ宮君」
私は彼に向き直ると、ゆっくり頭を下げた。それからまた、真っ直ぐに視線を合わせる。
「ごめんなさい」
「…」
「私まだ、石原君のことが好きなの。彼にとって私はどうでもいい存在かもしれないけど、私にとっては違う」
「大倉さん…」
「一ノ宮君がそう言ってくれるのは凄く嬉しいけど、私当分石原君を忘れられそうにないから。だから、ごめんなさい」
「…そっか」
一ノ宮君は少しだけ俯いて、すぐにパッと顔を上げた。キラキラした瞳に、柔らかく緩んだ口角。
「残念だけど、仕方ないね!」
明るい口調に、気を遣ってくれてるのが分かって益々申し訳なくなる。
「ずるい言い方してホントにごめんね!」
「ううん、そんな風には思ってないよ!」
「石原君の名前も出しちゃったけど、彼の友達がってだけで彼のことがどうとか言いたかったわけじゃないんだ。悪口言ってるみたいになっちゃったけど」
「うん」
「大倉さん」
「何?」
「俺、大倉さんが部活頑張れって笑ってくれるの、すげー好きだったんだ」
「…」
「ありがとね!ちゃんと答えてくれて!」
一ノ宮君はニカッと笑って、それからすぐ別の話題を振ってくれて。
申し訳なさでいっぱいになりながら、私も気付かないフリをした。
「ごめん、大倉さん。俺余計なこと言ってるね…」
「ううん、大丈夫」
「えっと…上手く言えないんだけどさ。俺が言いたいのはつまり、石原君がどうとかいうことじゃなくて…これからもし大倉さんが誰かに告白されて、そいつが俺の友達が言ってるヤツだったら、また大倉さんが傷付くと思ったんだ」
一ノ宮君は、自分が余計なこと言ってるって思ってるのか凄く申し訳なさそうな顔をしてる。
「ごめん…」
「何で謝るの?一ノ宮君は何も悪くないよ」
「俺…大倉さんを守りたくて」
一ノ宮君の瞳が、遠慮がちに私を見つめる。その真っ直ぐな視線に私は思わず足を止めた。
「好きなんだ、大倉さんのこと」
「っ」
「ごめん、ビックリした?」
「う、うん…」
一ノ宮君は、誰にでも明るくて優しい人だと思ってたから。まさか自分が、一ノ宮君みたいな人に特別に思ってもらえてるなんて考えもしなかった。
だけど一ノ宮君の顔を見れば、その気持ちが嘘なんかじゃないってハッキリ分かる。
少し赤い頬と、キラキラした瞳。真剣な眼差しで見つめられて、私の心臓もドキドキと早鐘を打つ。
「こんな言い出し方ずるいって分かってる。大倉さんが石原君と別れてそんなに経ってないってことも。でも、どうしても押さえらんなかった。今すぐにじゃなくても、俺と付き合うこと考えてもらえないかな…って」
一ノ宮君の告白は、心臓の真ん中にストンと刺さった。
旭君とは、全然違う。
「…」
「大倉さん?」
私、最低だ。目の前にいるのは一ノ宮君なのに、頭の中に浮かぶのは別の人。
ーーひまり
ぶっきらぼうに私の名前を呼ぶ、今でも大好きなただのお隣さん。
「一ノ宮君」
私は彼に向き直ると、ゆっくり頭を下げた。それからまた、真っ直ぐに視線を合わせる。
「ごめんなさい」
「…」
「私まだ、石原君のことが好きなの。彼にとって私はどうでもいい存在かもしれないけど、私にとっては違う」
「大倉さん…」
「一ノ宮君がそう言ってくれるのは凄く嬉しいけど、私当分石原君を忘れられそうにないから。だから、ごめんなさい」
「…そっか」
一ノ宮君は少しだけ俯いて、すぐにパッと顔を上げた。キラキラした瞳に、柔らかく緩んだ口角。
「残念だけど、仕方ないね!」
明るい口調に、気を遣ってくれてるのが分かって益々申し訳なくなる。
「ずるい言い方してホントにごめんね!」
「ううん、そんな風には思ってないよ!」
「石原君の名前も出しちゃったけど、彼の友達がってだけで彼のことがどうとか言いたかったわけじゃないんだ。悪口言ってるみたいになっちゃったけど」
「うん」
「大倉さん」
「何?」
「俺、大倉さんが部活頑張れって笑ってくれるの、すげー好きだったんだ」
「…」
「ありがとね!ちゃんと答えてくれて!」
一ノ宮君はニカッと笑って、それからすぐ別の話題を振ってくれて。
申し訳なさでいっぱいになりながら、私も気付かないフリをした。