嘘吐きな王子様は苦くて甘い
「…いや、守るとも違う。ただ俺の都合」

「ちゃんと説明してくれる?」

旭君を見つめると、彼は少し辛そうな顔をした。それから小さく頷く。

「ひまり、どこまで知ってる?」

「放課後の教室で、旭君と友達が私のこと話してるのが聞こえて。好きでもないくせにーとか、このままなわけないとか、そんな感じのこと」

「あー」

旭君は自分の髪をクシャクシャにして、悲し気な顔で私を見つめた。

「ごめん、ホント」

「でもね?一個言っていい?」

「ん」

「旭君の友達って、好きでもない子に告白にしてオッケーされるかどうかって遊びしてるってホント?」

「…まぁ、友達っつーかクラスのやつ」

「旭君は、私に酷いことした」

「…ん」

「でも、旭君もその人達と一緒に悪趣味な遊びやってるって、私は思ってないから」

「…」

「詳しい事情は知らないけど、旭君はそんな人じゃない。それは分かってるよって、言いたくて」

「ひまり」

「あ、でもだからって怒ってないわけじゃないんだからね!付き合おうって言われてめちゃくちゃ喜んでたのにあんなこと聞いて、私がどれだけ悲しかったか」

「…ごめん、ホントに」

「はい、私の言いたいことは終わりっ!次は旭君の番ね!」

わざと明るい声を出すと、旭君はまた悲しそうな顔をした。








「ひまりの言う通り、クラスでそういう悪趣味な遊びしてるヤツらはいる。でも俺には関係ねぇし、クラス一緒ってだけで普段あんま話さねぇし、バカが正直勝手にやってろ位に思ってた」

「うん…」

「でもソイツらが、次はひまりにするって言い出して。俺とお前が幼馴染みっての知ったらしくて、色々教えろって言ってきた。まぁ、当然ふざけんなっつったけどお前別に彼氏じゃねぇだろって言われたら何も言えなくて」

「…」

「だから、俺も混ぜろって言った。ひまりは俺しか見てねぇから、お前らより俺を選ぶって」

「何それ…」

「勝手なこと言って、マジで悪いと思ってる。素直に俺が好きだからひまりには何もすんなって言えばよかったって。でもそれ言うと余計にちょっかいかけてきそうで、その時は他に思い付かなかった」

旭君の表情を見れば、ホントに後悔してるんだなってすぐに分かった。

大きくなって身長が伸びて男の子っぽくなっても、旭君の泣き出しそうな顔とたまに見せるキラキラの笑顔は、昔から変わらないから。

「そんな自信なかった。ひまりが嫌がっても、アイツらの気が済むまでは無理矢理付き合ってることにするつもりだった。でもお前が…俺を好きだって、言ってくれたから」

「うん…」

「このまま隠して、付き合い続ける気にはどうしてもなれなかった。俺はお前を好きだけど、それも言わずに適当な告白しかしてねぇし、結局騙してることには変わりない。だから…」

「謝ったり、別れようって言ったりしたんだね」

「…ごめん」
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