嘘吐きな王子様は苦くて甘い
次の日、学園祭二日目。今日も家庭科部はブースを出店するけど、食べ物の販売じゃないから昨日より人数は少なくて済む。

「旭君、今日楽しみだね」

「どうせ昨日と一緒だろ」

「でも楽しみなの!昨日菫ちゃん達と回った時も凄く楽しかったけど、今日は旭君と回れるからまた新鮮に楽しめそうで!」

「…あっそ」

旭君はフイッとそっぽを向くけど、頬っぺたが少しだけピクピクしてて。恥ずかしがってるのかなって思ったら可愛くて、つい笑ってしまった。

「…笑うな、コラ」

「フフッ、ごめんね?」

「…このやろ」

旭君は私の頭をクシャクシャにして、私はそれから逃げるようにキャーキャー言いながら学校への道のりを歩いた。










「お待たせ、旭君」

家庭科部の店番が終わって、教室で待ってくれてた旭君の元に駆け寄る。

「おー」

「お昼もう食べた?」

「まだ」

「じゃあ買いに行こう」

「もう買ってる、適当に」

「えっ?」

「すぐなくなるらしいから」

旭君の視線の先を見れば、机の上にビニール袋やプラスチックの容器がいくつも置いてある。

「ありがう、旭君!」

「冷めてっかもな」

「ううん、食べたい!」

喜ぶ私に、旭君も表情を緩めた。

「ご馳走様、美味しかったぁ!」

焼きそばにたこ焼きにチーズハットグに苺飴。

どれも美味しくて、あっという間に食べてしまった。

「こんなに美味しかったら、確かにすぐ売り切れちゃうよね」

「昨日より人数多いしな」

「はい、これお金。ありがとうね」

「別にいらね」

「ダメだよ、ちゃんとしないと。足りなかったら言ってね?」

旭君は渋い顔をするけど、私達はまだ高校生だからこういうことはできるだけちゃんとしたい。

「旭君!」

「あーはいはい」

旭君はぶっきらぼうに私が渡したお金をポケットに突っ込んだ。

「お前昔からたまに強引なとこあるよな」

「え?そうだっけ?」

「小学校の時、俺ら二人で怪我したことあったろ?野良犬から逃げようとしてさ」

「あー、あったねそんなこと!あれ怖かったなぁ」

「お前いっつもすぐ泣く癖に、あの時は絶対泣かなかったよな。俺が泣いてたから」

「…そうだっけ?」

ホントは覚えてるけど、そこは知らないふりをした。まぁ旭君にはバレてるだろうけど。

「今も変わってねぇよな、俺ら」

「そうかな?」

「肝心なとこでは、俺よりお前の方が強い」

旭君はそう言って、真っ直ぐに私を見つめた。

「俺はお前のそういうとこも、ずっと…」

目がスッと細められて、ドキンと心臓が高鳴って、

「おーい旭、あんま教室でイチャつくなよー」

「俺らに見せつけてんのかぁ、ギャハハ」

旭君の友達が急にからかってきたから、ハッと我に返って私も笑って誤魔化す。

「あ、旭君私お手洗い行ってくるね!」

「…おー」

旭君も恥ずかしかったみたいで、口元に手をやりながらぶっきらぼうにそう返事をした。
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