独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「でも、そっか〜。仕事を辞めるとなると、次に狙うは永久就職かな?」
冗談っぽく言われた言葉に、思いっきり咳き込む。
「いえ、まさか」
今は結婚とか、本当に勘弁です!
「咳き込まなくてもいいじゃないか。いまどき永久就職って表現も古いのかな」
そうかもしれない。
普通の企業も、結婚も、ずっと続けるのが当たり前の時代から大きく変わっているのかもしれない。
ま、私は始まる前に、終わっちゃったんだけどね。
「私はいつか結婚したとしても、いつまでも相手の人と対等でいたいので、仕事はしたいです。次の仕事は、自分の好きな分野で見つけたいですね」
「そう。いいところが見つかるといいね」
優しい声色は安心できて、なんでも相談してしまいそうになる。でも、旅先だけの関係。婚約者に社内で浮気されました、なんて気が滅入る話をしたくない。
それにあんまり話して、勤め先が村岡物産だとバレたくもない。
やはりこの距離感は、旅先だけの特別な関係。