独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 レストランは夜景を展望できる素敵なお店。食事をしながら、私は少しだけ不平を漏らす。

「千人規模のパーティーって、村岡物産が染谷ケミカルホールディングスとの業務提携を発表する場だったんですね」

「そうだね。社長の娘として、花を添えられて良かったじゃないか」

 何食わぬ顔で言われ、呆れた声が出る。

「普通なら、村岡物産を退社した私は、出席しないパーティーです。わかっていて仕組まれたのかと、邪推してしまいます」

 もちろん私は、パーティーの催し物のひとつを担当する和菓子の販売員に過ぎない。

「振袖は着るの?」

「いえ。私は裏方ですし、動きやすくて目立たない着物の予定です」

「そう。残念のような、安心したような、複雑な気持ちだよ」

 言いたい意味が掴めずにいると、続けて付け加えられる。

「みんな、由莉奈の虜になってしまいそうだからね」

 当たり前だと言わんばかりの言い方に、むせて文句を口にする。

「海斗さん、お世辞はいいですから」

「お世辞じゃない。本心だよ」

 真っ直ぐに向けられる眼差しを、見つめ返すことが出来ない。
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